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第33回読書感想画中央コンクール

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第33回読書感想画中央コンクール

イベント「お話を読んで絵を描こう!」 気に入った場面、選んで アーティスト・井上涼さん

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子どもたちと同じテーマでイラストを描く井上涼さん 拡大
子どもたちと同じテーマでイラストを描く井上涼さん

 <読んだ感想を 絵に描こう>

 物語を読み、感じたり考えたりしたことを絵で表現する「第33回読書感想画中央コンクール」(毎日新聞社など主催)の作品募集が始まっている。10月24日には、NHK・Eテレの「びじゅチューン!」を手がけるアーティスト・井上涼さんがオンラインイベント「お話を読んで絵を描こう!」を開き、小学生ら子ども約130人に、物語から想像を膨らませて絵を描く面白さを体験してもらった。【斎藤広子】

井上さんが描いたイラスト 拡大
井上さんが描いたイラスト

 井上さんは、2016年から毎日小学生新聞(毎小)で月1回、世界のさまざまな芸術家の作品と人生を取り上げる漫画「美術でござる」を連載しており、「井上さんのイベントに参加したい」という読者の声を受けて毎小などが企画した。

 イベントは、参加者が事前に読書感想画のホームページから村山籌(かず)子さん作「川へおちた玉ねぎさん」をダウンロードして読み、何を描くかを考えてから、当日は、オンライン会議システム「Zoom」を使って自宅から井上さんとつながって絵を描いた。20人がパネリストとして井上さんとやりとりし、約110人がその模様を見守りながら、チャレンジした。

井上涼さんが描いた「川へおちた玉ねぎさん」 拡大
井上涼さんが描いた「川へおちた玉ねぎさん」

 「川へおちた玉ねぎさん」は「ジャガイモさん」の経営するホテルに、タマネギの紳士の「玉ねぎさん」がやってくるところから始まる物語。「短い中に、いくつもの場面と気持ちが出てくる」という理由で井上さんがイベントに使おうと選んだ。

 ただ、色鉛筆やマーカーを手にしたものの、子どもたちからは「どの場面を取り上げればよいのかわからない」という悩みも多く、井上さんは「自分の一番気に入った場面を描くことが、まずは大事です」と声をかけた。それから「絵は仕上げるのが難しいので、途中で飽きず、最後まで描きあげられるかどうかで選んでみて」とアドバイスした。

 「絵を描く時にはどういうことを意識していますか」という質問もあり、井上さんは「主人公が誰なのかわかりにくくなっていないかに注意しています。また、線を1本足すだけで絵は変わるので、線や色を足しながら、どう変わったのかを常に気をつけるようにしています」と応じた。

井上さんと話しながら絵を見せる参加者の子どもたち 拡大
井上さんと話しながら絵を見せる参加者の子どもたち

 「自由に絵を描くのは得意。でも、課題があると難しい」。こういう質問も寄せられ、井上さんが「そうですよね。私も小学生の時、虫が苦手なのに『カマキリ』という課題を出されて描けなかった思い出があります」と振り返った。そして「絵にはすごく幅があるので、課題として出される絵でも自由に描くことはできます。苦手な課題の時には、どこが好き、どこが嫌いなのかを考えてみてください。カマキリの場合には『カマキリの緑は好きだな』と思ったら絵の中で緑色を多くするとか。それだったら当時の私でも描けたかもしれません」と答えていた。

 子どもたちが描き終えると、井上さんも「川へおちた玉ねぎさん」をもとに絵を描いた。

 井上さんが想像したのは「玉ねぎさんが川に落ちた瞬間」。「まず、水しぶきから描きます。一番手前にあるものから描くと空間が楽に表現できます」「川の中を描いてみる手もありますね。色の濃さを変えたり、水の外は粗めに、中は隙間(すきま)を詰めて色を塗ると、水の中と外の違いを出せます」などと解説しながら10分ほどで色鮮やかに描きあげた。絵の右上には井上さん自身が川に飛び込んで玉ねぎさんを助けようとする姿も描き込まれ、「川に落ちて驚いている感じがすごい」「かわいい」という子どもたちからの感想でチャットがいっぱいになった。

 イベント終了後、子どもたちから「井上さんから絵のヒントをたくさんもらえました」「絵を描く楽しさが改めてわかりました」などの声が寄せられた。

    ■    ■

 子どもたちの描いた絵は、「楽しかった」という感想やチャレンジの様子とともに、ハッシュタグ「#井上涼毎小ワークショップ」でツイッター、インスタグラムに投稿されている。


 ■指定図書一覧

 <小学校低学年の部>

・「みどりバアバ」 ねじめ正一作 下田昌克絵 童心社 1540円

・「宇宙人がいた」 やまだともこ作 いとうみき絵 金の星社 1320円

・「アパートのひとたち」 エイナット・ツァルファティ作 青山南訳 光村教育図書 1650円

・「地球がうみだす土のはなし」 大西健夫、龍澤彩文 西山竜平絵 福音館書店 1430円

 <小学校高学年の部>

・「サステナブル・ビーチ」 小手鞠るい作 カシワイ絵 さ・え・ら書房 1540円

・「江戸の空見師 嵐太郎」 佐和みずえ作 しまざきジョゼ絵 フレーベル館 1540円

・「お話のたきぎをあつめる人 魔法の図書館の物語」 ローレンティン妃、パウル・ヴァン・ローン作 西村由美訳 佐竹美保絵 徳間書店 1540円

・「星空をつくるプラネタリウム・クリエーター大平貴之」 楠章子作 文研出版 1540円

 <中学校・高等学校の部>

・「世界とキレル」 佐藤まどか著 あすなろ書房 1540円

・「零から0へ」 まはら三桃著 ポプラ社 1760円

・「きみのいた森で」 ピート・ハウトマン作 こだまともこ訳 評論社 1760円

・「大切な人は今もそこにいる ひびきあう賢治と東日本大震災」 千葉望著 理論社 1430円

・「武器ではなく命の水をおくりたい 中村哲医師の生き方」 宮田律著 平凡社 1540円


 ■応募要項

 <応募資格および区分>

小・中・高校生。ただし満20歳以下に限る(2001年4月2日以降生まれ)。小学校低学年の部(1~3学年)▽小学校高学年の部(4~6学年)▽中学校の部▽高等学校の部

・指定読書=主催者が指定した図書の感想画

・自由読書=自由に選んだ図書(指定図書以外の図書で、海外で出版された図書・日本語以外の図書・教科書・副読本・読書会用テキスト類またはそれらに準ずるもの、および雑誌・付録は除く)の感想画

 <用紙・画材および画の寸法>

画用紙、ケント紙、キャンバスボード、マニラ紙、ボール紙いずれも可(ワク張りキャンバスや木製パネルなど厚みのある作品は不可)。画材はクレヨン、パステル、水彩、油絵の具など自由。版画、はり絵も可。ただし、立体など厚みのあるものを貼りつけた作品、または破損しやすい作品は審査の対象としない。寸法は36センチ×25センチ以上、55センチ×40センチ以下とする。

 <コンクール事務局>

電話 03・6265・6816(平日午前10時~午後5時)

公式サイト https://www.dokusyokansoubun.jp/kansouga/

主催 毎日新聞社、公益社団法人全国学校図書館協議会、実施都道府県学校図書館協議会

後援 文部科学省、実施都道府県教育委員会、横浜市・名古屋市・大阪市各教育委員会、全国造形教育連盟

協賛 凸版印刷株式会社


 ■人物略歴

井上涼(いのうえ・りょう)さん

 1983年、兵庫県生まれ。金沢美術工芸大卒。広告代理店でデザイン関係の仕事をしながら作品を発表し、アーティストとして独立。2013年にNHK・Eテレで「びじゅチューン!」が放送開始。毎日小学生新聞で「井上涼の美術でござる」を連載中。LGBTQなど性的少数者への理解を深めるためのコンテンツを制作する「やる気あり美」のメンバーとしても活動中。横浜市の「アソビル」で、11月29日まで「びじゅチューン!EXPO」が開催中。

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